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<< 戻る 2014年12月18日


次世代自動車 全固体Liイオン電池材料開発への新たなブレークスルー
				  「リチウムイオン電池材料/固体電解質中のドメインが電池特性に与える影響を世界で初めて解明」
				  ―JFCCナノ構造研、トヨタ、東大、東北大の共同研究―


1.発表概要
 技術開発競争が激化しているリチウムイオン電池であるが、電気自動車用途など、更なる高性能化に向けて全固体型Liイオン電池が盛んに研究されている。JFCCナノ構造研究所、トヨタ、東大、東北大の研究グループは、『理論計算と電子顕微鏡との連携により、これまで、明らかにされていなかった、リチウムイオン電池材料中のドメイン構造が固体電解質の特性に与える影響を世界で初めて明らかにした』と発表した。これを契機として、これまでリチウムイオン電池の分野において、不明な部分の多かった電池材料中の粒界・界面が電池特性に与える影響について、研究が促進され、電池材料開発のブレークスルーになることが期待される。
 なお、本研究の成果は、科学学術誌Journal of Power Sourcesに掲載された。

注) *ドメイン  結晶粒の内部で原子構造がそろった領域。異なるドメイン間にはドメイン境界ができる
  *固体電解質  外部から加えられた電場により、イオン(帯電した物質)を移動させることができる固体

2.発表内容
 リチウムイオン電池は、携帯電話やパソコンのバッテリーとして広く用いられている。近年では電気自動車用バッテリーとしての研究開発も盛んに行われており、世界各国でその開発技術競争が激化している。更なる高性能化に向けて可燃性の電解液を用いない全固体型Liイオン電池が盛んに研究されている。しかしながら、全固体型のLiイオン電池にはLi伝導度の高い固体電解質が必要不可欠であるが、固体電解質のLi伝導度は充分ではなく、さらなる改善が強く望まれている。
 今回、同グループは、球面収差補正走査透過電子顕微鏡(STEM; Scanning Transmission Electron Microscope)を用いることで、代表的な固体電解質材料である(La,Li)TiO3(LLTO)中に多く見られる90°ドメイン構造を特定することに成功した。この結果、同一結晶構造の中で、二つのドメインが接する場所で形成される界面は整合性が高いにもかかわらず、リチウムイオンの拡散が著しく阻害されることが第一原理計算により判明した。
 本結果により、電池材料中の界面が電池特性に与える影響の一端が明らかになった。この分野の研究が促進され、全固体リチウムイオン電池開発にさらに拍車がかかるものと期待されている。


3.本成果の発表
 科学学術誌Journal of Power Sources



図1. 固体電解質LLTO中のドメイン構造の原子構造
固体電解質中をLiが伝導する場合にはこのドメイン境界を通過しなければならず、
この過程がLi伝導を支配していることが明らかになった。



図2. ドメインにおけるLiイオン伝導の模式図
La2層を伝導してきたLiイオンはドメインにてその移動を大きく制限され、
ドメインを通過する過程がLi伝導を支配している。

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