プレスリリース

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概要

 強誘電体材料は、携帯電話・パソコン・プリンタなど様々な電子機器に広く用いられており、我々の生活に無くてはならないものとなっている。しかし、実用化されている強誘電体材料の多くには有害な鉛が使用されているため、鉛を含まない強誘電体材料の開発が求められている。これまで主な研究対象であった酸素八面体構造は詳細に調べつくされており、更なる革新的発展のため他の構造での強誘電体材料の発見が望まれている。我々は、最新の理論計算により単純な酸素四面体構造である酸化亜鉛においても強誘電体として機能し得ることを明らかにした。酸素八面体を持たない構造が強誘電材料となる可能性を理論的に明らかにしたことで、新たな強誘電体材料メカニズムの解明に拍車がかかり、材料開発などのブレークスルーに大きく寄与するものと期待されている。

本研究成果は、下記に開催したJFCC/2015年度、研究成果発表会で発表しました。
 7月3日(金)(大阪:梅田スカイビル(タワーウェスト36F))
 7月10日(金)(名古屋:愛知県産業労働センター(ウインクあいち2F、5F))
 7月17日(金)(東京:東大武田ホール5F

 この成果は、JSPS科研費新学術領域研究「ナノ構造情報」(課題番号25106008)の成果として結果得られたものである。

 強誘電体材料は、電子機器などに広く用いられており、我々の生活に欠かせないものとなっている。また、大容量の強誘電体メモリーが実現されれば、パソコンの立ち上げ時間がゼロにできるなど科学技術の発展にも大きな期待が寄せられている。しかしながら、その代表的物質であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など、強誘電体材料の多くには有害な鉛が使用されており、鉛の使用を控える動きが広まっている現在、非鉛強誘電材料の開発は急務となっている。チタン酸ジルコン酸鉛と同様に従来の強誘電体材料の多くは図(a)のような酸素八面体構造を有しているが、これら酸素八面体構造群はこれまでの材料研究により詳細に調べつくされており、新たなブレイクスルーの為には、酸素八面体構造以外での強誘電体材料の発見が望まれている。

 我々の研究グループでは、東京工業大学との共同研究により、図(b)のような単純な酸素四面体構造ユニットからなるウルツ鉱型結晶構造に着目し、その強誘電材料としての可能性を最新の理論計算により検討したところ、単純な酸素四面体構造である酸化亜鉛においても強誘電体として機能し得ることを明らかにした。

 酸素八面体を有しない結晶構造(今回の場合は酸素四面体構造ユニットからなるウルツ鉱型結晶構造)での強誘電材料開発の可能性が原子レベルで明らかになったことを受け、今後、新たな強誘電体材料メカニズム解明の研究が促進され、高性能非鉛圧電材料開発などのブレークスルーとなることが期待されている。

詳細

 強誘電体とは自発分極があり、さらに外から電界をかけることで分極反転する物質である。以前、我々は、酸素四面体構造ユニットからなる酸化亜鉛などウルツ鉱型結晶構造の強誘電材料としての可能性を、分極反転が起こったときの原子の動きを予測し、理論計算によりその分極反転のしやすさを検討した。これにより、酸化亜鉛(ZnO)の分極反転のしやすさは、代表的な強誘電体であるチタン酸鉛(PbTiO3)と同程度になることを報告したが、電界下での実際の酸化亜鉛の振る舞いや分極反転が起こるために必要な電界の強さ(Ec)などは分かっていなかった。

 そこで今回、最新の理論計算手法を用いて酸化亜鉛の電界下での振る舞いと分極反転に必要な電界の強さを計算から求め、酸素四面体構造ユニットからなる酸化亜鉛の強誘電性について更なる検討をおこなった。その結果、電界のない状態では図(b),(c)①のような構造であった酸化亜鉛は、電界をかけることにより、図(c)②のように亜鉛(Zn)が下向きに、酸素(O)が上向きに移動していき、さらに電界をかけることにより図(c)③のような電界をかける前とは逆向きの分極を持った構造となることを解明した。さらに、図(d)に示す分極と電界の関係から、酸化亜鉛は分極反転可能であること、その分極反転に必要な電界の強さ(Ec)は7 MV/cmと実現可能な値を示すことを突き止めた。

 これにより、酸素八面体を有しない単純な結晶構造においても強誘電体として機能し得ることが明らかとなった。この知見により、今後、新たな強誘電体材料メカニズム解明の研究が促進され、高性能非鉛圧電材料開発などのブレークスルーとなることが期待されている。 なお、本研究成果は、JFCC研究成果発表会にて詳細を報告する予定である。

(a) チタン酸鉛(PbTiO3)[酸素八面体構造]
(b) 酸化亜鉛(ZnO)[酸素四面体構造]
(c) 酸化亜鉛の電界下での振る舞い(分極反転経路)
(d) 計算より得られた酸化亜鉛のP-E曲線
(e) 強誘電体のP-E曲線[例]

用語説明

分極

 物質にプラスとマイナスの電荷の偏りが現れる現象。

自発分極(PS

 強誘電体など特定の誘電体が持つ外部電界がない状態で存在する電荷の偏り。

分極反転

 外部電界により自発分極(PS)の正・負が逆転する強誘電体特有の現象。

抗電界(Ec

 分極反転が起こるときの電界の強さ。

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研究担当者
ナノ構造研究所 計算材料グループ 田口 綾子(たぐち あやこ)