(3)過酷な繊維回収条件に耐えうる繊維の仕様を示唆
実際の炭素繊維の表面形態は平滑なものから凹凸を有するものまで多様であり、用途に応じて使いわけているのが現状です。これまでの過熱水蒸気処理した炭素繊維の評価を進める中で、繊維破断面をSEM観察すると破壊起点のほとんどが表面き裂から起きることが解っています。この知見は、炭素繊維の強度はその表面形態に強く依存することを示唆していますが、炭素繊維のリサイクル回収を想定した場合、回収処理後の炭素繊維強度に及ぼす表面形態の影響については明らかになっておりません。
本研究では、過熱水蒸気処理後の炭素繊維強度に対し、「繊維表面形態」および「酸素ガス分圧」の影響を評価し、強度低下を抑制するための因子を明らかにしました。
下図は、表面形態の大きく異なる2種類の繊維を用いて、過熱水蒸気処理中の酸素分圧に対し、引張強さをプロットしたものです。繊維の表面形態によらずあるしきい値より酸素分圧が高くなると、引張強さが減少傾向を示すことが確認されました。その一方で、表面が平坦な繊維より、表面凹凸の大きい繊維の方が強度低下しにくいことが明らかになりました。
つまり、過酷な繊維回収条件(酸素混入、リサイクル回数の増加)にも耐えうる繊維の仕様を示唆しました。
今回新たに得られた研究結果は、CFRPからの炭素繊維回収技術に関して、「過酷な繊維回収条件にも耐えうる炭素繊維の仕様」および「低品位繊維の高強度化方法」を提示しています。これらの研究成果は炭素繊維のリサイクル回収技術に対し、「品質向上」、「コスト削減」、「廃棄物削減」の分野で貢献できると期待しています。
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