<< 戻る | 2008年4月2日 |
1.タイトル: 「リチウムイオン電池中のリチウム原子サイトの可視化に世界ではじめて成功―電池材料開発への新たなブレークスルー」 2.発表概要: JFCCナノ構造研究所の幾原雄一客員主管研究員(東大教授)らのグループは韓国の仁荷大学と共同で、技術開発競争が激化しているリチウムイオン電池の特性を決定付けるリチウムイオンサイトの直接観察に世界ではじめて成功したと発表した。この成功により、これまでリチウムイオン電池の分野において不明であったリチウムイオン伝導機構や電池劣化メカニズムなどが明らかになり、電池材料開発のブレークスルーになることが期待されている。本研究の成果は、4月第一週発刊の米国科学雑誌「フィジカルレビューレターズ」で発表される予定。 3.発表内容: リチウムイオン電池は、携帯電話やパソコンのバッテリーとして広く用いられている。近年では電気自動車用バッテリーとしての研究開発も盛んに行われており、世界各国でその開発技術競争が激化している。リチウムイオン電池の性能はその正極活物質に大きく依存しており、これまではリチウムコバルタイト(LiCoO2)などが主に用いられてきた。しかし、安定性、寿命や信頼性などに問題があり(日本メーカー品でも近年発火事故を起こして社会問題になったことがある)、現在はオリビン型(LiFePO4型)のリチウムイオン電池の研究開発が世界的な規模で行われている。正極活物質の性能はリチウムイオンの挙動と関係しており、リチウムイオンサイトの可視化が必要とされており、世界中の研究機関でその可視化に関する研究が行われている。しかし、リチウムイオンの原子番号は3番と小さいために直接観察することは困難であり、技術的には難しいと考えられている。 今回、同グループは、オリビン型リチウムイオン電池を対象とし、リチウム原子サイトの一部を鉄で修飾し、かつJFCCナノ構造研究所に導入中の世界最高性能球面収差補正走査透過電子顕微鏡(STEM, Scanning Transmission Electron Microscope)を用いることで、リチウムサイト一個一個の直接観察に成功した。この技術の特徴は走査透過電子顕微鏡のレンズに球面収差補正を行うことで1オングストローム以下の分解能が達成できることにある。この結果より、リチウムイオン拡散メカニズムが明らかになり、リチウムイオン電池開発にさらに拍車がかかるものと期待されている。すなわち、電池材料開発の分野に新たなブレークスルーを起こす可能性がある。 |
これまで可視化は不可能といわれていたLiイオン電池正極活物質中のLiサイトの直接観察に世界ではじめて成功した。(Feイオンで構成される6員環の中央の弱い白点がリチウムイオンサイト) |
Liイオン電池は正極活物質中のLiイオンが脱着することにより電気を充放電する |
4.発表雑誌: フィジカルレビューレターズ(Phycical Review Letters)、4月号 |
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