<< 戻る | 2010年11月16日 |
名古屋大学エコトピア科学研究所・楠研究室は、ファインセラミックスセンターと共同で、SiC表面分解法により作製したグラフェン/SiC界面の構造およびその電子状態を、高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)観察により詳細に調べた。第一原理計算を組み合わせた手法によって、その界面には2つの異なる構造が形成されていることをはじめて見だした。本成果は、次世代半導体材料として期待されるグラフェンにおける電子状態の解明および制御に貢献するものである。今後は、今回見出されたグラフェン/SiC界面構造の制御を目指していく。 炭素原子のみから成る厚さ1原子層の物質であるグラフェンは、その中を電子がシリコンの150倍以上の移動度で移動できることから、ポストシリコン半導体材料として期待されている。また、基板としてSiCを採用し、その上に生成するグラフェンの層数を制御することによって、エネルギーバンドギャップを自在に制御することも可能である。SiC上グラフェンの電子状態は、両者の界面構造に強く依存することが知られている。しかし、SiC/グラフェン界面については、これまでにX線反射率測定やSTM観察に基づく表面構造の検討はあるものの、界面の結晶構造を断面方向から直接観察した例はほとんどないのが現状であった。 本研究では、SiC基板表面を熱分解することにより作製したグラフェンとSiCの界面の結晶学的特徴を、透過型電子顕微鏡により直接観察することを目指した。また、界面の結晶学的特徴と電子状態との関係を調べるため、第一原理計算による検討を合わせて行った。 図1および2には、SiC表面分解法により作製したグラフェンのHR-TEMを用いて明らかとなったタイプ1および2の界面構造の高分解能像と、第一原理計算も含めて考察された結晶構造モデルをそれぞれ示す。タイプ1では,界面のLayer-1において、一部のC原子が、SiC基板中のSi原子と近づくように原子変位を持っている。これは、これら原子間の強い共有結合性の存在を示唆している。一方タイプ2では、界面のLayer-0は、C原子の数が、グラフェン1層を形成するのに必要な原子数の約1/3によって形成されていることがわかった。 参考URL http://www.er.esi.nagoya-u.ac.jp/rescwe/kaiseki/index.html |
図1 グラフェン/SiC界面構造Type-1の HR-TEM観察像および界面構造 |
図2 グラフェン/SiC界面構造Type-2の HR-TEM観察像および界面構造 |
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