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<< 戻る 2011年7月14日


次世代パワーデバイス用SiCの欠陥検出方法の開発
−世界初、SiCデバイスの品質向上に大きく貢献−


 ガソリンの価格の高騰や原子力発電所の事故によって、自然エネルギーを利用した発電が重要になってきている。しかし太陽電池など自然エネルギーで作った電力は直流のものが多く交流に直して使わないといけない。そのためには、インバータと呼ばれる装置が必要になってくる。このインバータはシリコンと呼ばれる材料で作られてきたが、最近の用途を満たすだけの性能を引き出すことは難しい。

 替りの材料として炭化ケイ素(SiC)と呼ばれる材料が注目を集めている。このSiCでインバータを作ると電力消費を小さくできるので無駄になる電気エネルギーを1/10にすることができる。また、高温でも安定して動作するため冷却設備がいらず、同じ容量でサイズは数百分の1になる。これを使うと、太陽光発電で作った電力を無駄なく使ったり、電気自動車やハイブリッド車の燃費を小さくすることができるため、重要な材料である。

 インバータを作る材料の中に欠陥があると装置が設計通りの性能や寿命にならなかったり、不良率が上がって高品質なものを低コストで作ることができない。ところがこの欠陥を簡単に低コストで調べることが難しく、場合によっては大型放射光施設で調べる必要があり、材料の品質の評価を気軽にすることが難しかった。

 そこでJFCCではトヨタ自動車株式会社と共同で、簡単に欠陥のある場所、種類、密度を見分けることのできるエッチング法を開発した。従来のエッチング法はKOH腐食液に材料を浸漬し、欠陥の場所や種類そして密度を判別する方法であるが、インバータ用のSiC材料では性能を良くするために添加した不純物の影響で平坦にエッチングされる。そのため欠陥の場所に穴ができず、このエッチング方法が使えない。そこで、腐食液の種類や調合割合、温度等を検討することにより新しいエッチング法を開発した。

 この方法でSiC材料を評価した顕微鏡写真を示す。大小2種類の六角形の黒い窪みが見えるが、大きな六角形は貫通らせん転位*1)、小さな六角形は貫通刃状転位と呼ばれる欠陥があることを示している。この2つは装置性能を低下させるが有害度は低い。筋様に見えるものは基底面転位と呼ばれる欠陥であり、これがデバイス性能を大きく低下させる今一番問題となっている欠陥である。このように開発した欠陥検出方法は欠陥の種類、数、場所を簡単に見分けることができる技術である。

 また、SiC基板の欠陥だけでなく、基板、エピタキシャル膜*2)、及びその界面の欠陥も同時に見分ける方法も開発した。詳細は研究成果発表会で発表する。

 世界で初めて開発した、これらの欠陥検出技術によってパワーデバイス用SiC材料の品質、性能、寿命が向上し、更なる低価格化が進むことが期待される。

*1)転位 :結晶中に含まれる線状の格子欠陥で、らせん転位、刃状転位などがある。
*2)エピタキシャル膜 :基板に対して決まった結晶方位を保って成長させた膜のこと。


固体酸化物燃料電池の発電メカニズムの模式図
TSD:貫通らせん転位
TED:貫通刃状転位
BPD:基底面転位

エッチピットの顕微鏡像

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