リチウムイオン伝導性酸化物の短時間・低温合成技術
~今後、全固体リチウムイオン電池への波及が期待される~
2013年6月25日
Press Releases
2013年6月25日
本研究成果は、7月5日(名古屋)、7月12日(東京)、7月19日(大阪)で開催する、JFCC 2013年度研究成果発表会で発表します。
この成果は、NEDO「革新型蓄電池先端科学基礎研究」の委託業務の結果、得られたものです。
現在実用化されているリチウムイオン電池には有機系の液体電解質(電解液)が用いられており、可燃性であるため発火事故の一因となっています。安全性に優れた電解質として期待されるのが「固体電解質」で、固体電解質を用いた「全固体型リチウムイオン電池」の開発が急速に進展しています。
現在研究が進められている固体電解質には、リン酸塩系、硫化物系、酸化物系の3つがあります。今回研究を行ったLLZ(Li7La3Zr2O12、ランタンジルコン酸リチウム)は、酸化物系固体電解質のひとつで、現在のところ、室温で最も高いリチウムイオン伝導度を有すると報告されています。さらにLLZは、水や金属リチウムに対して安定であることから、実用化に大きな期待が寄せられています。
LLZは、通常、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、炭酸リチウムの混合粉末を原料として、高温で熱処理して合成されます。一般的な合成条件は、900℃ 12時間+1100℃ 24時間+1250℃ 24時間で、各温度での熱処理が終わるたびに、取り出して、再粉砕、再混合しています。また、高温で長時間熱処理するため、リチウムの蒸発が起こり、リチウムを過剰に加えて合成する必要があります。
本研究では、まず、通常の方法でのLLZの生成メカニズムを解明しました。その結果、LLZの生成には、比較的低温の700℃でLLZが生成する過程と、もう一つは比較的高温の900~1250℃でLLZが生成する過程があり、この2つが並行して進むために、純粋なLLZの合成には高温が必要であることがわかりました。
そこで、比較的低温でのLLZ生成過程を利用した、低温合成プロセスを開発しました。この合成法では、原料に、低温生成過程の中間生成物として生成するLa2Zr2O7(ジルコン酸ランタン)と、酸化ランタン、炭酸リチウムを用います。このような原料を用いることで、700℃でLLZが生成し始め、750℃でわずか1時間の加熱で、高純度のLLZが生成することがわかりました。新たな原料として用いたLa2Zr2O7は、高温構造材料用セラミックスとして広く用いられている材料ですので、比較的容易に入手できます。また、高温での熱処理が不要ですので、リチウムの蒸発はほとんどなく、過剰のリチウムを加える必要もありません。
この成果により、通常のセラミックス合成に用いる装置のみを用いて、短時間かつ低温でLLZ粉末を合成できるようになり、LLZの低コスト工業生産、ひいては全固体電池の実用化に大きく近づくと思われます。
詳細については、成果発表会にて発表いたします。
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研究担当者
材料技術研究所 木村禎一(きむらていいち)