本研究成果は、7月5日(名古屋;愛知県産業労働センター「ウィンクあいち」)、7月12日(東京;東大武田ホール)及び7月19日(大阪;大阪大学「中之島センター」)にて開催するJFCC/2013年研究成果発表会で発表いたします。
NaCl型結晶構造を有する遷移金属炭窒化物(Me(C,N))は、溶融温度が極めて高く、優れた耐熱性・耐食性および高い熱・電気伝導度を有する材料です。この化合物は同一の結晶構造を有する広い組成領域で固溶体を形成します。この特性を生かし、耐摩耗工業用部材として種々応用されています。また、導電性を有することから、放電加工が可能となり生産性の点からも優れています。
これら遷移金属炭窒化物は、その共有結合性の高さから難焼結性を示す物質でもあり、緻密な焼結体を得るには極めて高温・高圧下での焼結が必要となっています。従来の炭窒化物粉末は、高温熱処理した後に粉砕して製造しており、焼結などに利用するには最適とはいえません。このため、粒径が制御された高品位な粉末を多量に合成できる技術が求められます。高品位な炭化物、炭窒化物粉末を安価で提供することが可能となれば、開発粉末を用いた新たな製品開発への発展が期待されます。
スケールアップが容易に可能な炭素熱還元法を用い、粒径制御された遷移金属炭窒化物固溶体粉末の合成方法を確立しました。特に、工具材料として重要な材料であるチタン炭窒化物に関して重点的に研究を行い、工具材料に最適な組成で、粒径制御された粉末(Ti,Mo)(C,N)を得る技術を確立するとともに、粉末粒子径制御のメカニズムを明らかにしました。開発された(Ti,Mo)(C,N)粉末を用い、従来にないサーメット組織を得て、機械的特性の向上を実現しました。今後、これら粉末を用いて、セラミックスや金属材料の組織制御へ応用していきます。 |