東京工業大学 細野秀雄教授の最先端研究開発支援(FIRST)プロジェクトの成果で、成蹊大学 三浦正志准教授らは磁場に強い鉄系超伝導薄膜の研究を行っており、ナノ構造研究所の加藤丈晴研主任究員はその鉄系超伝導薄膜の微細構造を解明し、これらの研究成果が英科学誌Nature Communicationsに掲載されました。
加藤丈晴研主任究員は、成蹊大の三浦准教授、米Los Alamos National Lab.のB. Maiorov博士、(公財)国際超電導産業技術研究センターの田辺圭一副所長らとともに、2008年に東工大 細野秀雄教授のグループによって発見された鉄系超伝導体の研究に携わってきました。鉄系超伝導体は、超伝導特性を示す温度(臨界温度)が〜55 Kと比較的高いため、冷凍機温度や液体水素温度下での医療機器(MRI)、発電機、電力貯蔵装置などへの応用が期待されています。しかし、鉄系超伝導体は低磁場では高い電流が流れるものの、高磁場で電流が低いことが課題でした。そこで、三浦准教授らは独自の超伝導薄膜作製技術を用いて、鉄系超伝導体であるBaFe2(As0.66P0.33)2薄膜内部にBaZrO3ナノ粒子を均一分散することに成功しました。その結果、磁場下での電流低下の原因である磁束の運動をBaZrO3ナノ粒子が抑制し、現段階で、世界最高の磁場中電流特性を得ることに成功したものです。加藤研究員は、薄膜のナノ構造解析を行い、粒子の材料同定や分布を明らかにしました。
今後は、異なるサイズ、形状や密度の人工欠陥を制御・導入することで更なる特性向上を目指していく予定です。
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