2020年度

JFCC研究成果集

マテリアル革新力を支える新材料開発と先端解析技術

6研究成果 / 画期的微構造解析・処理技術

R-29

2020

走査電子顕微鏡用簡易型収差補正器の開発

課題

電子顕微鏡の高空間分解能化には、レンズのボケ(球面収差)を補正することが必要であるが、従来の補正装置は複雑・大型で高価であった。そのため、小型で簡便、安価な補正装置の開発が求められていた。

解決手段

・特殊な形状の電極(円環状スリット/円孔)に電圧を印加して発生する電界の凹レンズ作用を利用

・電極および搭載治具のコンパクト化(サイズ:数10 mm)

・既存の汎用SEMにも(絞り部分を改造することで)搭載可能な機構

成果・優位性

・収差補正により汎用SEMの分解能が向上
 (達成値:1.2 → 0.7 nm @30 kV/3.0 → 1.5 nm @1 kV)

・サイズ・コストは従来装置の10分の1に低減

・調整が簡便で観察条件の変更後に短時間(数分以内)で再調整が完了

・圧縮センシング等の情報処理を併用すればノイズ低減、高解像化も可能

期待される市場・応用

・SEMの高分解能化による様々なサンプルの高精度・高確度解析

・低加速電圧(数kV以下)での高分解能観察
 ⇒ダメージ受けやすいソフトマテリアル試料等の解析

・AI的画像処理を併用することによる更なるダメージ抑制(極低侵襲化)

発表文献

T. Kawasaki et al., Surf. Interface Anal. (2016) 48, 1160

謝 辞:本研究は、JST先端計測分析技術・機器開発プログラム「超汎用型 SEM用Cs/Cc補正器の開発」において実施されたものである。