<< 戻る | 2012年6月20日 |
本研究成果は、7月6日(名古屋:愛知県産業労働センター(ウインクあいち))及び 7月12日(東京:東大武田ホール)に開催するJFCC/2012年度研究成果発表会で発表いたします。 |
チタンおよびその合金は、高い破壊靭性と生体親和性を有するために、整形外科領域では人工関節や脊椎固定具として、歯科領域では人工歯根等として広く使用されている。特にこれからの人工関節は、30年以上持つ長寿命のものが求められており、人工関節の寿命に大きく関係するものに、?人工関節の摩耗低減と?骨と人工関節をいかに長期間固着させるかがあります。 今回の発表内容は、?の骨との長期間固着が期待される純チタンの表面処理方法に関するものです。 骨との固着方法には、まず、骨セメントを用いる方法がありますが、15年以上経過すると骨粗鬆症によって骨と人工関節の間に隙間が生じ、弛みが発生してしまいます。そのため、人工関節自体に骨の成分であるアパタイトが生体内で自発的に生成する能力、生体活性能を付与するための表面処理が開発されております。最近開発された方法では、人工関節の材料である純チタンを空気中で熱処理するだけで生体活性能を付与することが可能ですが、良好なアパタイト形成能を発現させるための紫外線処理の効果が持続しないという課題がありました。そのため、高い生体活性能を長時間持続する簡便な表面処理方法が望まれております。 我々は、純チタンを極微量の酸素を含む窒素雰囲気中で熱処理(酸窒化)するだけで、生成した酸化チタン層(窒素固溶)の表面が、従来には無い、高いアパタイト形成能を有することを発見し、しかもその機能が長時間持続可能であることも確認しました。 また、擬似体液に浸漬後に形成されるアパタイトの速度論的解析を行った結果、従来の空気中での熱処理では、アパタイト核が一定速度で生成し全面被覆に長時間必要であるのに対し、本研究での酸窒化処理では、アパタイト核の形成サイトが浸漬初期に飽和し、その後、短時間で全面被覆されることを明らかにしました。 生体活性能が向上した原因の一つとしては、酸化チタン表面近傍への窒素固溶(格子間窒素を形成)に伴い、酸素空孔が表面近傍に偏在し、表面が正に帯電するためと推察しています。その結果として、擬似体液中では、表面近傍に優先的にリン酸イオン(−)を引き寄せ、続いてカルシウムイオン(+)を取り込んで、アパタイト生成を促進したものと想定しています。 今後は、本酸窒化処理をチタン合金に応用し、また細胞実験や動物実験を行うことにより、骨との結合性を確かめる予定であります。長寿命の人工関節が実現すると、再置換術を皆無に出来、また若年の患者様にも適用可能なため、労働力の確保が可能になり、医療費の削減に貢献できると考えられます。 |
[ 用語説明 ]
|
【参考図】 |
<本研究に関する連絡先> (財)ファインセラミックスセンター 材料技術研究所 リライアブルマテリアルグループ 橋本 雅美 TEL : 052-871-3500、FAX : 052-871-3599 E-mail : masami@ |
<< 戻る |
内容に関するお問合せは下記まで。
|