マテリアルズインフォマティクスを応用した高誘電率材料設計システムの開発に成功
~積層セラミックスコンデンサ誘電体材料の開発に新たな設計指針~
2018年3月27日
I【概要】
1 現状
積層セラミックスコンデンサに高い誘電率を有する常誘電体材料の開発が求められています。
2 本研究の成果
ファインセラミックスセンター、TDK、京都大学、NIMSからなる研究チーム(森分博紀主席研究員、梅田裕二担当係長、田中功教授、博之助教)では、マテリアルズインフォマティクスを応用し、高い誘電率を有する常誘電体材料を理論計算から予測するシステムの開発に成功しました。当該研究チームでは、この誘電率材料設計手法をTDKが主体となり2017年12月にすでに特許出願を行っています。(特願2017-232900:出願人TDK)
現在この高誘電率材料設計手法により導出された高誘電率候補材料について合成・実証実験を行っており、予測された結晶構造を有する数種類の材料の合成に成功しています。
3 今後の展開
当該研究チームでは、本成果の高誘電率材料設計手法により得られた候補材料の実用材料化(合成手法の開発、量産化)するのと並行して、更に広範囲の材料組成の探索を可能にするための高速高誘電率材料設計手法の開発も現在行っています。これらの成果により環境に優しい高誘電率材料開発に大きく貢献でき、積層セラミックコンデンサ材料の開発に新たな設計指針を与えると期待されています。
※本研究の一部は、科学技術振興機構 (JST) のイノベーションハブ構築支援事業の「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ (MI2I)」、JSPS科研費新学術領域研究「ナノ構造情報」(課題番号25106008)、の一環として実施した結果から得られた成果です。
II【本研究の詳細】
1 現状と課題
積層セラミックスコンデンサ(注1)はスマートフォンやパーソナルコンピュータなど様々な電子機器に使用されており、私たちの生活に欠かすことの出来ない誘電材料です。その材料には従来BaTiO3が主に用いられていますが、発見後70年以上経過しており、産業界を中心に新規材料のニーズが高まっています。
2 研究手法
マテリアルズインフォマティクス手法(図1)を活用し、第一原理計算(注2)を用いて広範囲に誘電体材料を探索しました。
3 研究成果
ファインセラミックスセンター、TDK、京都大学、NIMSからなる研究チーム(森分博紀主席研究員、梅田裕二担当係長、田中功教授、林博之助教)では、マテリアルズインフォマティクスを応用し、高い誘電率を有する常誘電体材料を理論計算から予測するシステムの開発に成功しました(図2)。当該研究チームでは、この誘電率材料設計手法をTDKが主体となり2017年12月にすでに特許出願を行っています。(特願2017-232900:出願人TDK)
現在この高誘電率材料設計手法により導出された高誘電率候補材料について合成・実証実験を行っており、予測された結晶構造を有する数種類の材料の合成に成功しています。
4 今後の展開
当該研究チームでは、本成果の高誘電率材料設計手法により得られた候補材料の実用材料化(合成手法の開発、量産化)するのと並行して、更に広範囲の材料組成を探索を可能にするための高速高誘電率材料設計手法の開発も行っています。これらの成果により環境に優しい高誘電率材料開発に大きく貢献でき、積層セラミックコンデンサ材料の開発に新たな設計指針を与えると期待されています。当該研究チームでは、本成果の高誘電率材料設計手法により得られた候補材料の実用材料化(合成手法の開発、量産化)するのと並行して、更に広範囲の材料組成の探索を可能にするための高速高誘電率材料設計手法の開発も行っています。これらの成果により環境に優しい高誘電率材料開発に大きく貢献でき、積層セラミックコンデンサ材料の開発に新たな設計指針を与えると期待されています。
用語説明
注1) 積層セラミックスコンデンサ
BaTiO3などの誘電体材料と電極を多数積み重ねたセラミックコンデンサ。小型で周波数特性が良いという特徴がある。
注2) 第一原理計算
物質中の原子の配置情報のみを与えることで量子力学の原理に基づき経験的なパラメーターを用いること無く電子状態、化学結合、エネルギー状態を計算する手法。第一原理計算を用い、ある条件下において材料がどのような状態に変化するのかというシミュレーションが可能である。