【用語説明】
注1)銅酸化物高温超伝導材料YBa2Cu3Oy
1987年にアラバマ大学のマウケン・ウー博士とヒューストン大学のポール・チュウ博士により発見された超伝導材料。超伝導転移温度は、95ケルビン(摂氏マイナス178 ℃)に達する。
注2)テスラ
磁場(磁束密度)の強さを表し、Tで表記される。
注3)磁束ピン止め点
磁場下の超伝導体内には、量子化された磁束(量子化磁束)が侵入する。この量子化磁束は、超伝導に流れる超伝導電流と磁場によるローレンツ力(電磁場中で運動する荷電粒子が受ける力)を受け、超伝導体内を運動するため、この運動により超伝導電流が流れにくくなる。そこで、超伝導電流向上を目的に、量子化磁束の運動を抑制(ピン止め)するために導入する非超伝導相のことを磁束ピン止め点とよぶ。
注4)キャリア密度
体積あたりの電荷キャリアの個数である。銅酸化物高温超伝導YBa2Cu3Oyや鉄系超伝導BaFe2(As1-xPx)2のキャリアは、ホール(物質中で正の電荷を運ぶ担体として振る舞う)である。
注5)鉄系超伝導材料BaFe2(As1-xPx)2
2008年に東京工業大学の細野秀雄 栄誉教授のグループにより発見された鉄を含む一連の超伝導体群(鉄系超伝導体)の一つでAeFe2As2(Aeはアルカリ土類金属)を母相とした超伝導体。BaFe2(As1-xPx)2の最高超伝導転移温度は、31ケルビン(摂氏マイナス242 ℃)に達する。
注6)量子化磁束
超伝導体を貫く量子化された磁束。その大きさは、φ0=h/2e=2.07×10-17 ウェーバー(hはプランク定数, eは電子の電荷)で表される。量子化磁束のサイズはナノサイズである。
注7)特許第5270176号
三浦正志、中西尚達、須藤泰範、和泉輝郎、塩原融により発明された「RE系酸化物超電導線材及びその製造方法」。具体的には、金属有機化合物分解(MOD)法を用いてY123超伝導薄膜内に非超伝導ナノ粒子を導入する方法に関する特許。
注8)21世紀発明賞
(公社)発明協会(総裁 常陸宮正仁親王殿下)が表彰する賞で、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ、中小・ベンチャー企業、大学及び公設試験研究機関等の研究機関に係る発明の中で著しく優秀と認められる発明が対象。令和2年度から未来創造発明賞に名称変更。
注9)CuOチェーン
Y123は、CuO鎖(チェーン)サイトに酸素イオンが入ることで超伝導が発現する。よって、このサイトの酸素量を制御することがかなり重要になる。
注10)熱力学的臨界磁場
臨界電流密度に非常に大きな影響を与えるパラメータ(Jc∝Hc2)。ひずみやキャリア密度などで制御することが可能であるが、基本的には材料固有のパラメータである。大きさは、μ0Hc=0.35(φ0/λabζab) テスラ(φ0は真空中の透磁率、λabは磁場侵入長、ζabはコヒーレンス長)。
注11)特許第5757587号
三浦正志、安達成司、田辺圭一、細野秀雄により発明された「鉄系超電導材料、及びこれからなる鉄系超電導層、鉄系超電導テープ線材、鉄系超電導線材」。具体的には、パルスレーザー蒸着(PLD)法を用いてBa122:P薄膜内に非超伝導ナノ粒子を導入する方法に関する特許。
注12)図4および図5に示した様々な超伝導体の詳細組成
(Y,Ca)123:(Y1-xCax)Ba2Cu3Oy、Bi2223: Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ、Hg1223: HgBa2Ca2Cu3O8+δ、Bi2212: Bi2Sr2CaCu2O8+δ