R-16 2017 分子性強誘電体TCAAの相転移挙動の理論計算 原子レベルでの理論計算により、分子性強誘電体TCAAの構造相転移のメカニズムを解析 355K以下で強誘電性を示すトリクロロアセトアミド(TCAA) は、分子BのCCl3ユニットに特徴的な構造揺らぎが観測されている。その構造揺らぎが引き金となり相転移が起こるといわれているが、その理論的な検証は十分に行われていない 有限温度での理論計算を用いてTCAAの相転移挙動を解析し、CCl3ユニットが相転移にもたらす影響を明らかにする (1) 分子AのCCl3ユニットの構造揺らぎは左右対称であるのに対し、分子Bの構造揺らぎは左右非対称であることを解明 (2) 分子Bの構造揺らぎ角は温度に依存して増加した。また、400Kでは揺らぎが大きくなり、分子A・BともにCCl3ユニットが回転し常誘電相へ相転移した。この相転移挙動は実験結果とよく一致 TCAAの相転移メカニズムを理論計算により明確化 (a) TCAA結晶構造(分子A・Bは配位環境が異なる) (b) 250Kにおける分子BのCl原子の分布(40ps) 炭素-炭素結合方向への投影 (c) 分子A・BのCl原子の構造揺らぎ(250K,40ps) (d) CCl3の構造揺らぎ角の温度依存性 鉛を使わない新規強誘電材料の開発 謝辞 : 本研究は、JSPS科研費25106008の一環として実施したものである